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初めての外国人雇用:外国人雇用と社会保険&労働保険について

  • a-alpajaro
  • 10月6日
  • 読了時間: 10分

更新日:2 日前


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外国人を初めて雇用する際には、就労ビザの取得だけでなく、日本人と同様に社会保険や労働保険への加入手続きが求められます。加入の有無は在留資格の審査や雇用契約の適法性にも関わる重要なポイントであるため、本記事では外国人を雇用する際に必要となる保険の種類や加入条件、採用担当者が押さえておくべき実務手続きを解説します。


初めて外国人雇用を行うとき、企業の採用担当者は「雇用を決めた外国人も日本人と同様、社会保険・労働保険に加入させなければいけないのだろうか?」、と疑問を感じることでしょう。


雇用する企業はもちろん雇用される外国人が一定の条件を満たせば、保険に加入する必要があります。


そこで今回は外国人を雇用した場合に加入しなければいけない保険や、加入条件、加入手続きについて解説していきます。


外国人を採用するときは原則として保険加入が必要

外国人の雇用を決めたとき、一定の条件を満たせば保険加入が必要です。


日本の企業が外国人を即戦力として雇用する場合だけではなく、技能実習生として受け入れる場合も同様です。


  • 日本の社会保険制度とは?

まずは日本の社会保険制度をみてみましょう。

社会保険と労働保険の区分する表

社会保険制度の中には、健康維持や医療給付および老後の生活保障等が受けられる「社会保険」、労働者の雇用したときのリスクに備える「労働保険」があります。


外国人を雇用した場合、必ずしも図示された保険すべてに加入するわけではありません。一定の条件に合致した場合、日本人と同様に保険加入が必要となります。


  • 特定技能等の外国人材や技能実習生の採用時、ビザ申請だけでは不足?

外国人労働者が日本で働く場合、就労に対応した在留資格である「就労ビザ」が必要です。


特定技能や技術・人文知識・国際業務等といった就労ビザを得るためには、「在留資格認定証明書交付申請書」等を入国管理局に提出しなければいけません。


申請は原則として雇用される外国人本人が行うものの、雇用する企業側のサポートも必要となるでしょう。


なお、就労ビザを取得するときには保険加入が必須となる場合もあります。たとえば、雇用する側が「強制適用事業所」(法人事業所もしくは従業員が常時5人以上の個人事業所)の場合、外国人労働者の健康保険の加入が必要です。


強制適用事業所に該当していると、就労ビザの審査で健康保険の加入の有無が重要な判断要素となるので、採用担当者は注意が必要です。


一方、技能実習生である外国人も就労ビザ「技能実習」に該当します。技能実習生の場合、企業の即戦力とはいえず技能移転を目的とした分野なので、帰国を前提としています。


ただし、技能実習に該当する外国人であっても、講習期間中は国民健康保険へ加入させましょう。講習終了後、実習の実施機関が健康保険の適用事業所であれば健康保険の加入を行います。


採用担当者は、ケースに応じて外国人の保険加入への細やかな気配りが必要です。


  • 社会保険の加入について

健康保険・厚生年金保険に加入している企業が外国人を雇用した場合、採用担当者は健康保険・厚生年金保険の加入手続きを進めていきます。


なお、健康保険・厚生年金保険加入後は外国人労働者と企業(事業主)が折半負担し、毎月の給与から天引きする形で納付していきます。


外国人が労働保険に加入する条件

雇用する側、雇用される外国人が次の条件に該当すれば、採用担当者(事務担当者)は健康保険・厚生年金保険の加入手続きが必要です。


法人事務所と個人事業ごとに必要となる保険を表す表

雇用する側が法人であった場合、従業員数に関係なく強制適用事業所となり、健康保険・厚生年金保険に加入手続きを行わなければいけません。


(※)法定16業種:健康保険法第3条3項1号・厚生年金保険法第6条1項1号に規定された業種。


健康保険が対象となる人材の区分を表す表

正社員として雇用される労働者の他、報酬が支払われている法人代表者・常勤役員や、アルバイトとして雇用される外国人であっても条件(1)または(2)を満たした場合、健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。


なお、健康保険に加入した外国人労働者が、日本に住んでいる親族を「被扶養家族」として加入させることも、一定の条件に合致すれば可能です(国内居住要件)。


  • 被扶養家族が被保険者(外国人労働者)によって生計を維持されている(家族の年収が原則として130万円未満)

  • 被扶養家族が日本国内に住所(住民票)がある


ただし、外国人労働者の家族が海外留学したり、外国人労働者の海外赴任に家族が同行したりする等、日本国内に生活の基礎があると認められる場合、国内居住要件の例外となります。


外国人が健康保険・厚生年金保険に加入する条件を満たさなくとも、日本では国民皆保険・年金制度が設けられています。採用担当者は国民健康保険・国民年金に入るよう外国人労働者を指導する必要があります。


その他、外国人労働者が帰国する場合、厚生年金保険(国民年金も同様)の被保険者期間が6か月以上あれば、納めた保険料の一部を受け取れる「脱退一時金制度」がある旨も説明しておきましょう。


採用担当者が行う外国人材の社会保険加入手続きと必要書類

健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、雇用する側(事業者)が進めていかなければいけません。


外国人労働者の入社日から5日以内に採用担当者(事務担当者)は、次の書類を日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)ならびに健康保険組合へ提出します。



日本年金機構への提出方法は電子申請、郵送、窓口持参のいずれでも可能です。


なお、外国人労働者として日本で働く場合、日本の社会保険に加入するので、母国の社会保険の保険料と二重に負担するケースもあるでしょう。


この二重加入を防ぎつつ年金加入期間を通算するため、日本では諸外国と社会保障協定の締結を進めています。


外国人労働者の母国が社会保障協定を締結している場合、申請をすれば年金保険料が免除されます。


2025年現在、社会保障協定を締結している国は23か国です。


  • アメリカ大陸:アメリカ・カナダ・ブラジル

  • アジア:中国・韓国・フィリピン・インド

  • オセアニア:オーストラリア

  • ヨーロッパ:イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・ベルギー・オランダ・スペイン・チェコ・アイルランド・スイス・ハンガリー・ルクセンブルク・スロバキア・フィンランド・スウェーデン


必要書類の社会保障協定適用証明書交付申請書は、就労開始予定年月日または延長開始年月日の約6か月前から最寄りの年金事務所に提出できます。


  • 雇用保険の加入について

雇用保険とは、労働者の雇用維持・生活の安定を目的とする労働保険です。外国人でも、原則として雇用保険の被保険者となるので、採用後は速やかに加入手続きを進めていきましょう。


なお、保険加入後は毎年決められた雇用保険料率に従い、保険料を外国人労働者(天引き)と企業が負担していきます。


外国人が雇用保険に加入する条件

次の適用要件に合致した外国人が雇用保険の被保険者となります。


雇用保険が適用される勤務条件を表す表

適用要件の「31日以上の雇用見込み」は、31日以上雇用継続しない旨が明確である場合を除いて適用されます。


たとえ雇用契約期間が31日未満であっても、次のようなケースでは外国人労働者に雇用保険が適用されるので注意しましょう。


  • 雇用契約を更新する場合もある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がない

  • 雇用契約に更新規定はないものの同様の雇用契約を締結した労働者が、31日以上雇用された実績がある


外国人を雇用し現在雇用保険に未加入でも、雇用している側が雇用保険に加入が必要だったと気付いた場合、遡って保険へ加入できます。


一方、外国人労働者は雇用している側が雇用保険の加入手続きをしていないと思われる場合、ハロー ワークに対し保険加入が必要であるか否かの確認請求も可能です。


採用担当者は外国人労働者と後々トラブルとならないよう、適用要件に合致しているかどうかを見極める必要があります。


  • 採用担当者が行う外国人材の雇用保険加入手続きと必要書類

雇用した外国人が雇用保険の適用要件を満たしているとき、雇用する側は雇入れ日の属する月の翌月10日までに、事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所) で加入手続きを行います。


手続きの際には「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。外国人の国籍・地域、在留資格・在留期間、資格外活動許可の有無等を忘れずに記入しましょう。


日本人か外国人かを問わず、初めて雇用保険の対象となる労働者を雇用する場合、雇用保険適用事業所設置届、労働者名簿・出勤簿等の書類も提出します。


なお、届出期限を過ぎて提出する場合、過去に遡り外国人が被保険者となった事実を確認するため、追加書類(遅延理由書)の添付も必要です。


  • 労災保険の加入について

労働者が仕事中に負傷した、業務が原因で病気になった、通勤中事故にあったというとき給付を受けられる労働保険です。


外国人労働者を雇用する側が、労災保険料の全額を負担します。


外国人が社会保険に加入する条件

労働者を一人でも雇用した場合、その労働者が日本人であろうと外国人であろうと、正社員かアルバイト・パートかを問わず、原則として労災保険へ加入しなければいけません。


労働基準監督署が雇用する側に対し、保険加入を行うよう指導したにもかかわらず、自主的な加入を行わないときは、職権で加入手続きが行われます。


労働保険料を遡って徴収される他、追徴金を徴収される可能性があるので注意しましょう。


また、雇用する側が故意または重大な過失で保険加入をしていない期間中、労働災害が発生する事態も想定されます。


その際に労災保険給付を行えば、労働保険料が遡って徴収(追徴金含む)される他、労災保険給付に要した費用の100%または40%を徴収されてしまいます。


外国人労働者を雇用した場合、採用担当者は速やかに労災保険へ加入手続きを進めなければいけません。


  • 採用担当者が行う外国人材の労災保険加入手続きと必要書類

雇用する側は労災保険および雇用保険の対象となる労働者を雇用する場合、労災保険とともに雇用保険の加入手続きも行います。


一元適用事項が加入すべき労災保険や雇用保険を説明する図

一元適用事業に該当する場合、労災保険加入→雇用保険加入と順番に手続きを進めていきましょう。


一方、農林水産・建設・港湾等に関する事業は二元適用事業に該当します。加入手続きは一元適用事業とやや異なります。


二元適用事業が対応すべき手続きを整理した図

労災保険・雇用保険加入手続きの順番はどちらからでも構いませんし、提出期限も一元適用事業と同様です。


ただし、ハローワークへ労働保険保険関係成立届・労働保険概算保険料申告書も提出する必要があります。


まとめ

外国人労働者を雇用した場合は、さまざまな保険への加入が必要となるケースもあるでしょう。


保険に未加入のままだと外国人労働者とのトラブルや、行政からペナルティーを受ける事態も想定されます。


初めて外国人を雇用する採用担当者は、より慎重に保険加入の有無を確認し、手続きを進めていきましょう。

      



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執筆者

三沢 尚広 (宮城県在住・行政書士)

行政書士業務の傍ら、「外国人採用」「在留手続」に関する記事ライターとして活動している。外国人の存在が日本経済に影響を与え続けると考え、外国人材の育成や活用に大きな関心を持っている。今後も外国人の採用や諸手続きに関する有益な情報を発信していく予定である。


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